それでは、十字軍について話します
キリスト教の人たちが、イスラムに戦いを挑んだ話です

まず、十字軍を可能にしたのは、経済的な面のおかげもあると思います

当時の土地経営は、領主農奴によって構成されています

農奴には、主に賦役貢納の義務がありました。賦役は、肉体労働のことです

初期の土地は、直営地保有地に分かれていました。この形態を古典荘園といいます

農奴は、直営地という領主が所有する土地で農産物を育てる義務があります。これが賦役ですね。もちろん、やる気がありませんw


なぜかというと、そこで生産したものは全部、領主のものになるからです
農奴が一生懸命働くのは、保有地のほうです


こっちは、自分たちの土地みたいなものですから、税金である貢納をしっかりすれば、余ったものは、農奴のものです


やはりモチベーションは、生産性の向上に欠かせません。私たちもイケメンやカワイイ子がいれば、学校・職場が楽しいです。好きな人の前では、イイトコ見せようと働きます


なので、直営地は廃止され、保有地のほうがメインになっていきます。これを地代(純粋)荘園といいます。フランスでは11~13世紀までには、地代(純粋)荘園に移行しました
古典荘園⇒地代(純粋)荘園の流れ、しっかり覚えましょうね


農奴というくらいですから、彼ら一般にわれわれがイメージする農民より、遥かに苦しい義務があります
死亡税結婚税、教会に収穫の10%である十分の一税なども納めなければいけませんでした


また領主裁判権にも従う必要がありました。自分の土地の所有者が、ルールのすべてを決めます
極端な話、領主が機嫌悪くて、たまたま側にいた農奴がぶん殴られても、領主が法律なので文句がいえません
ジャイアンと思ってください

領主は、自分の土地内であれば、たとえ上司の国王であっても文句を言わせません。これを不輸不入権といいます

中世の封建制は、このように成り立っていました

こういう話を聞くと、今の世の中に生まれてよかったなと思います


そのヨーロッパは、長く二圃制という、土地の半分を休ませて、半分を使うシステムを採用していました

素人的には、全部使えばいいじゃないかという感じですが、それだと土地が痩せて、使い物になりません

気持ちは全部使いたくても、使えないジレンマがあるわけですね

これが、10~11世紀に変化します。三圃制が生まれたのです
これは春耕地・秋耕地・休耕地に分けて、土地の三分の二を使うようにしたやり方です


12世紀には、鉄製農具や重量有輪犂も使用されています

生産性があがったのは、一目瞭然ですね


十字軍が始まるのは、1096年からです。十字軍は戦争です。戦争には莫大なお金が必要です。自分たちが旅行に行くだけでも、けっこうお金使いますよね?


人が万単位で動くわけですから、十字軍を始めるのには、かなりのお金が必要だったと思います
そのためこれらの農地開発の発展は、戦争を下支えしたのだと思います


今だったら、中国が経済繁栄をバックにぐりぐり攻めてきてるのと似ていますね


生産性が向上すると、人口が増えます。人口が増えると、今までの土地が狭くなります
新たな土地が必要になるわけですね


たとえばドイツ騎士団などは、12~14世紀に、今まであまり住んでいなかったエルベ川以東東方植民を行います
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土地を拡げる理由が、ヨーロッパにあるわけですね

そこに一報が入ります。セルジューク朝が小アジアを支配してしまいました。トルコ人で聞かれる王朝は、セルジューク朝とオスマン朝です

小アジアは、ビザンツ帝国の領土でした。ビザンツ帝国は自力でこれを防げなかったので、ローマ教皇に救援を求めます


ローマ教会とビザンツ帝国は、仲が悪いですが、兄弟ゲンカに似ています。ちょっと仲が悪くても、泥棒が家に入ってきたら、団結します

韓国もイチイチ文句を言ってきますが、北朝鮮が攻めてきたら、日本に寄ってくると思います
そんな状態でも日本を突っぱねたら、相当末期だと思いますw


というわけでクレルモン宗教会議(1095)が、ローマ教皇のウルバヌス2世によって開催されます
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これによって、聖地イェルサレム奪回を目的とした第1回十字軍がおこります。一般的に十字軍は、7回あるといわれてます


語呂です
十字組む(1096)十字軍、不慣れ(1270)で失礼、憎い(1291)アッコン


第1回十字軍は1096年、最後の第7回十字軍が1270年に実施されています
そして十字軍が、名実ともに失敗に終わるのが、1291年のアッコン陥落です

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第1回十字軍は成功します。彼らは、本気で聖地を奪回したいと思っていましたから、士気も高かったです
実際にイェルサレムを取り戻し、拠点を死守するため、イェルサレム王国(1099~1291)を建国します


これに猛然と反抗したのが、アイユーブ朝サラディンです。エジプトにあったファーティマ朝を倒してできた王朝ですね

彼はまず、1187年に再度イェルサレムを取り返します。またイギリス・フランス・ドイツ連合軍を迎え撃ちます

結局、連合軍側は途上でのドイツ皇帝フリードリヒ1世の事故死や、イギリスとフランスの仲違いなどで、サラディンと戦ったのは、イギリスのリチャード1世だけです。これを第3回十字軍(1189~1192)といいます


第4回十字軍(1202~1204)は、ちょっと今までと色合いが違います。もはや最初の頃の志なんかありません絶頂期の教皇インノケンティウス3世は、ビザンツ帝国に攻め込みます。これの背後には、ヴェネツィアがあったといわれてます


この時代は、まだ大航海時代とかは訪れていません。つまりヨーロッパ人が莫大な利益を得るためには、地中海を支配することが重要なわけです

地中海の商業支配にあたって、ビザンツ帝国の首都であるコンスタンティノープル(現・イスタンブル)は強烈なライバルです


そのため、十字軍を本来の目的を逸脱して、ビザンツ帝国に攻め入り、ラテン帝国(1204~1261)を樹立します。宗教とは名ばかりの腐った連中ですw


第5回十字軍(1228~1229)では、特異な王が現れます。それは神聖ローマ皇帝のフリードリヒ2世です。彼は話し合いで、イェルサレムをもらいます


これは当時、異常なことです。なぜかというと、異教徒は彼らにとって悪魔だからです
悪魔に対して何をしても良いという価値観が彼らにはあります。十字軍において、イスラム教徒は悪魔ですから、女・子供関係なく殺します。レイプもするし、人肉も食ったといいます。当時、それが当たり前でした

今の私たちから見ると、まさに鬼畜の所業です。ローマ教会が「十字軍は間違っていた」と謝ったのは、2000年です

何百年も、この行為を当然と思っていたわけです


そんな時代に、フリードリヒ2世は無益な殺し合いを意味がないと思っています
ある意味で織田信長に似ています。時代の先を行き過ぎた人なのです


このような彼の性格が生まれたのは、シチリアパレルモ出身という地理的影響が考えられます。これは、地中海のど真ん中にある島ですね。キリスト教とイスラム教が交差する地域でもあります

そのため、彼はアラビア語を含む7ヶ国語を話せたといわれます
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アラビア語は、いわば敵国の言語ですから、ヨーロッパの人には信じられません

しかし彼は、言語を通して、相手の文化も理解できているわけですから、悪魔見えないわけです。イスラムの人も同じ様に人を愛することを知っているのです。彼は人の話に影響されるのでなく、自分で考え、分析し、行動しました

彼には当時まだなかった価値観、ヒューマニズム(人間中心主義)があるわけです

ここは今の私たちも学ぶべきことだと思います。日本語だけでなく、他の言語を学ぶ必要があるわけです

自分で話し、相手と触れ合うことで、極端に加工された情報から抜け出せるかもしれません

一度も交流をもったことのない中国人や韓国人を憎むというのは、本来ありえないことです

もちろんこの言葉は、自国の愛国主義に囚われた中国人・韓国人にも言ってやりたいことですけどね

ヒューマニズムは、そのような国籍意識を越えた人間を尊重する概念です

これをフリードリヒ2世(在位1215~1250)が持っていることは、本当に凄いと思います

結局、当時の人に彼の先進性は理解されず、教会から2回も破門されてます

第6、7回十字軍は、フランスのルイ9世が主導し、エジプトやチュニジアのチュニスを攻めますが、失敗します

これが、十字軍の流れです


あとは十字軍結成にあたって発足した騎士団を3つ覚えましょう
それは、ヨハネ・テンプル・ドイツ騎士団です


ヨハネ騎士団は、第1回十字軍で生まれます。十字軍以後も存続し、1530年にはマルタ島をカール5世からもらったため、マルタ騎士団ともいいます

この騎士団は、1571年にスペインとオスマン帝国とのレパントの海戦にも参戦しています


テンプル騎士団は、第1回十字軍で奪回したイェルサレムを守るために1119年に設立しています

彼らの任務は尊いものですから、寄付によって莫大な収入がありました。それを狙ったのがフランスのフィリップ4世です。1312年に彼が金目当てで騎士団を潰してます

ゴシップ的な話をすると、この騎士団の残りがフリーメーソンを設立して、現在の世界を支配しているという話です


ドイツ騎士団は、第3回十字軍で設立されます。この時期、もう十字軍はうまくいっていませんので、彼らは聖地の運営などは諦めて、東方植民のほうに力が入っていきます


以上が、十字軍です


次回は、中世の都市衰退期のキリスト教を話しましょう

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